コンプレックスとは?
コンプレックスとは、ユングが提唱した、一定の感情を核にした無意識内の観念や記憶の集合体を指します。観念複合体とも訳されます。
コンプレックスは劣等感のことではありません
一般的にはコンプレックスは劣等感と意味が混同されていますが、
心理学の専門辞典で「コンプレックス」の定義を紹介します。
「無意識下にある、自我を脅かすような心的内容が一定の情動を中心に絡みあって構成されるまとまり」
心理学辞典(有斐閣)より
ユング心理学におけるコンプレックス
また、ユング心理学においてもコンプレックスと劣等感は区別されます。
劣等感は文字通り自分が人より劣っているという感覚のことです。
しかしながら、コンプレックスは苦痛、恐怖感、羞恥心など意識には受け入れがたい感情の集まりのことをいいます。「感情に色付けされた心的複合体」=コンプレックスということです。
自分の行動に影響を与えている、心の深い部分にあるわだかまりと捉えることもできます。
そのため、通常は自分では自覚が難しいのです。
例えば、ある特定の事柄について極端に感情的になってしまったり、妙にこだわってしまったり、そこだけはどうしても気になってしまうという反応ポイントがあるとその心の反応こそがユングの言う「コンプレックス」なのです。
complex
形容詞
1複合の、いくつかの部分から成る、合成の
2複雑な、入り組んだ名詞
1複合体、合成物
2(建物などの)集合体。 工場団地、コンビナート
3【精神分析】 コンプレックス、複合
コンプレックス発見の歴史
コンプレックスが発見されたのは1906年のことです。
着想したのはフロイト
名付をしたのはユングと言われます。
フロイト(1856~1939)は、無意識にある心の動きが意識に影響を与える、とフロイトは着想したのです。
ユング(1875~1961)は、そのフロイトの着想をベースとして、「コンプレックス」という用語を使うようになりました。
ユングはフロイトを師匠としてでなく、父親のように慕っていたとも聞きます。
意識的にコントロールできなかったコンプレックス
コンプレックスの概念は、ユングが言語連想検査の中で発見しました。
言語連想実験の手順が興味深いので解説します。
(1) 検査者は被検査者に、ある言葉から連想する言葉を1つずつ挙げてもらう(全100問)
(2) 1つ1つの言葉に対する反応語と反応時間を記録する
(3) 100問が終わったら、被検査者に再び最初に連想した言葉を答えてもらう
言語連想検査を行った際に、ユングは被検査者が特定の言葉に対して連想時間の著しい遅延が生じることに気づき、
その理由をコンプレックスの存在に求めました。ユングは連想遅延の理由を、刺激語に誘発されたコンプレックスが、当人の意識によってコントロールされなかったためと考えました。
ユングは特に、成長の過程での辛い体験が、コンプレックスとして無意識に抑圧されていると考え、発展させていきました。
フロイトものちに、コンプレックスという用語を使うようになったとされます。
様々なコンプレックス
ユングが提唱した
「感情に色付けされた心的複合体」=コンプレックスには、
様々な種類があります。
ここでは、代表的な例についてご紹介しましょう
父親コンプレックス
父親への敵対心と、「父親を乗り越えたい」という気持ちを持つと同時に、「父親に愛されたい、認められたい」という気持ちが複雑に入り組んで、時として強い感情的な反応を生じます。
例:10歳以上年長の男性に対して、妙に反抗的だったり、反対にそのような人に認められたいという年上の男性に好かれようとして極端に張り切ったりする。女性の場合は、年上の男性にばかり恋愛感情を抱くこともある。
母親コンプレックス
母親はなぜ自分を受け入れてくれないのかという失望・不審感と、「もっと母親に愛されたい」という気持ちが複雑に絡み合って生じる心的反応。男女共に抱く可能性がある感情です。
また、母親コンプレックスが生じる対象は、実の母親ばかりとは限りません。
例:年上の女性に対しておどおどしたり過度に甘えたりする。
また、女性からの束縛や干渉を嫌って敵意に近い感情を抱いたりする。
男性の場合は相手が年上でなくても、近しい女性に対し母親コンプレックスが働く場合もあります。
恋人に自分の母親像を重ねて、「もっと愛して欲しい」「もっと受け入れて欲しい」と愛情を求める一方で、「束縛されたくない」「どうせ見捨てられるんだ」「どうして愛してくれないんだ」
といった失望・敵意・恨みの感情を抱いたりする。この矛盾性が問題。
シンデレラコンプレックス
男性に対して理想を追求する女性の潜在意識にある「依存的願望」を指します。
女性は外側から自分の人生を変えてくれるのきっかけを待ち続けている描写が強い童話『シンデレラ』から名付けられました。
メシア(救世主)コンプレックス
「自分なんか劣った人間なんだ。生きていても役に立たない人間なんだ」
という自己への過小評価と、「自分は人を救える力を持った特別な人間なんだ」
という万能感とが入り混じって生じる心的反応。医師や心理カウンセラー、介護、看護士…等、援助職を志す人は、このコンプレックスに突き動かされている場合あり。
メシアコンプレックスは、自分が救われたいが為に、人を救おうとしたり、人のために何かをしようとするコンプレックスなので、外部の者に良くしようとする傾向があります。
親子の場合子供から搾取する場合があり、愛情を縦に子供をコントロールしていくことがあります。
「誰かを救いたい」という感情に
「自分が救われたい」という感情が混ざっているところが
メシアコンプレックスの厄介な点です。対人援助職は自分のこころの隙間を埋めるために仕事をしている方も多い可能性のある業界なのです。
まずは「自分を満たしましょう」と言われるのはこのあたりも大きく理由になります。
カインコンプレックス
「親からの愛情を独占したい」という気持ちが生みだす、兄弟・姉妹間の強い敵対感情から生まれる複合体。旧約聖書の中の「創世記第4章」、カインとアベルのエピソードに由来している。
兄のカインと弟のアベルがそれぞれ神に供え物を捧げたところ、神はアベルの供え物だけを喜んだ。強い嫉妬心に支配されたカインは、弟のアベルに嫉妬して殺害してしまうことから名付けられた。
具体的には、兄弟のほうが優れていることに関して、「勉強だけできたって仕方がない」「足が速くたって何の役にも立たない」などと相手を否定するような反応を示すこと。
ディアナコンプレックス(ダイアナコンプレックス)
自分が男性になりたいと、女性の抑圧された男根羨望(うらやむこと)を指します。女性性の発達や男性に対する性的関心が止まることが問題です。
例)女性らしい身体の成熟を拒否するようになることで摂食障害を発症する
異性への関心を拒絶すれば性恐怖症や、後天的要因による性同一性障害などの問題
女児の場合、自分には男性器が無いので男児のように振舞えないから母親を愛することができないという強い劣等感で母親を愛することを断念すると言われます。
シスターコンプレックス
女姉妹に対して強い執着や愛着を抱くことでです。いつまでも支配されていたいという心的傾向があります。
アドラーのいう劣等コンプレックス
劣等コンプレックスはアドラー(1870-1937)が提唱しました。
アドラーは幼少期から病気になりがちで、声の異常や骨格異常で苦悩してきました。身長は150センチと他の兄弟よりくも低かったと言います。
身体的なハンデを背負っていたアドラーはそのコンプレックスを単純に悪いものとは考えなかったようです。アドラーは、人が何かをする上で、コンプレックスは大きな動機となっており、それを絵エネルギーの源泉とすることで成長していく、と考えました。
コンプレックスと付き合うことから始めよう
悩んで、苦しんで、最後に辿り着く解決法は「知らないことを知り、それを俯瞰し、受け入れること」です。
コンプレックスの対処法は、ズバリ、自分との「コミュニケーション」を大切にすること!
自分の弱さ、自分が何に対してどんな劣等感を抱いているのかをジャッジせず受け入れ、認めることが第一歩です。
「○○さんと話していると、妙に腹が立つ、イラッとしてしまう」というのは、
その○○さんがあなたの劣等感を刺激する人だからです。
その場合、「ああそうか。○○さんのこういう態度が、私を刺激しているんだな」
と俯瞰し、認知するだけでも、変わってきます。
まずは、自分を受け入れることから始めましょう。
もっと自分とのコミュニケーションを深めたい方はNLP講座にいらしてくださいね。