人材の保有している能力を最大限に発揮させる方法として、「コーチング」があります。コーチングは、コミュニケーションを通じて相手に新しい視点や気づきなどのきっかけを与え、保有能力を引き出したり自発的な行動を促す手法です。
企業においては、コーチングに取り組むことで業績の向上だけでなく、社員自身の満足度や充実感の上昇も期待することができるでしょう。
この記事では、コーチングを一つの商材としてビジネス展開する「コーチングビジネス」について紹介します。
コーチングビジネスとは
コーチングビジネスとは、クライアント企業の社員などに対してコーチングを行い、その対価を得るビジネスです。コーチングによって企業が掲げている目標を達成できるように、自発的な行動を引き出したりスキルや潜在能力を呼び起こしたりします。
コーチングビジネスの種類
コーチングは対象者の違いによって、以下のような種類があります。
ビジネスコーチング
ビジネスコーチングは、仕事上の目標を達成させるための取り組みです。社員の価値観と企業の価値観の共通項を見つけ出します。また企業が示す目標に取り組むことで、社員自身も成長していけるように自発的な行動を促します。
ビジネスコーチングを行うことで、社員のモチベーション向上やスキルの習得、課題や問題点の解決策の検討など、社員の自主性を強化することが可能です。また、自ら仕事のやりがいを見出すことができ、離職率の低下にも期待がかかります。
エグゼクティブコーチング
エグゼクティブコーチングは経営陣や管理職など、企業の上層部に対して行う取り組みです。企業の上層部は往々にして孤独と言われています。例えば間違っている方向に進んでいたとしても、部下が上司に指摘するケースは少なくフィードバックされる機会が滅多にないためです。
エグゼクティブコーチングでは状況を踏まえて、企業の上層部が自身の考えや行動を振り返る機会を設けます。企業の経営方針や事業方針を見直したり、新たなビジネスの創出を模索したりする目的での活用が有効です。
ライフコーチング
ライフコーチングは、その人の生き方や人生を豊かにすることをテーマにした取り組みです。「自身にとっての理想の人生」など、テーマや目標が大きな視点になるのが特徴と言えます。大きく漠然としているテーマをコーチングによって、複数の小さな目標に細分化し、具体的にどのように過ごしていくのかまで落とし込むことです。
その他
この他にもコーチングビジネスには、さまざまな種類があります。精神的な側面に着目し苦手意識の克服などをコントロールするメンタルコーチング、また健康な生活や健康な働き方をサポートするヘルスコーチング、円滑な人間関係を構築するための土台作りや考え方をサポートするリレーションシップコーチングなどです。
これらのコーチングの種類には、明確な切り分けが無いです。そのためビジネスコーチングの中には、リレーションシップコーチングの要素が入ってくる場合もあります。コーチングの内容は、コーチング提供者の知識やスキルに左右される可能性が高いです。
最近注目の教育コーチング
最近、教育関連のコーチングが増えてきました。子育てコーチング、親サポートコーチングなどです。得に「子どもの強みを最大限伸ばしてやりたい!」という親の願いを叶えることができる”才能”や”個性”を活かすためのコーチングは今後もニーズが伸び続けるでしょう。
コーチングビジネスを成功させる方法
コーチングビジネスの成功とは、対象となる人材が目標を達成することです。そのため現在の状態と目標とする状態とのギャップを正しく把握し、ギャップを埋めていくことが必要となります。
目標設定
目指している状態や欲しい結果を、目標として設定します。具体的に落とし込むことがポイントです。具体的に目指している目標を明確にすることで、自身の目標をイメージすることができ、行動に移しやすくなります。例えば設定した目標を他人に説明できるくらいに、具体的・言語化できている状態が望ましいです。
テーマ設定
テーマには目標に向かって突き進む際に、意識しておきたいことを設定します。どのような姿勢で目標達成に取り組んでいくのかなどです。例えば高いモチベーションを維持しながら取り組みたい、休みをコントロールしながら進めたいなどがあります。
リスク管理
コーチングを進めていく際、環境の変化や企業の事情など、さまざまなリスク要因で予定通りに進まない場合があります。それらのリスクを適切にコントロールしマネジメントするためには、リスク管理が必要不可欠です。例えば、あらかじめ発生の可能性があるリスクを洗い出したり、過去の事例を抽出しておくなど、リスクの予測や予防を対策しておくことが大切となります。
行動計画
目標やテーマが明確になりリスク予防も適切に処置した次は、目標達成までの行動計画の立案です。行動計画は、5W1Hを基本として「いつまでに」「誰と」「どこで」「何を」「どのように」「なぜ行うのか」を具体的に決定します。最初は大きな視点で目標の達成期日を決定し、そこに至るプロセスを細分化した後、それぞれの期日を決定する方法です。実際の行動はコーチング対象者が行うため、自身で行動計画を決めるようにしてください。
フィードバック
行動計画にしたがって行動を開始した後は、状況や進捗の確認などを行い結果をフィードバックします。問題なく進んでいるのか、何か問題が発生しているのか、その解決策を見つけ出せているのかなど、状況に応じて適切なフィードバックを行うことが大切です。
コーチングビジネスで起業前に知っておくべきポイント
コーチングビジネスで起業した場合、一番最初に立ちはだかる壁はクライアントの確保です。コーチングは効果や成果が目に見えにくい商材のため、どの企業においてもコーチングに対する需要は高くないと言えるでしょう。
そのような現実の中でコーチングをビジネスとして成り立たせるためには、クライアントの設定や集客をしっかりと行うことが重要となります。
クライアントの設定・集客
コーチングビジネスで起業しても、クライアントを確保しなければ成り立ちません。クライアントを確保するためには、具体的なクライアント像の設定が必要です。
例えば、クライアントはどのような職業で年齢はどれくらいで、年収、性別、個人なのか法人なのかなど、具体的にイメージできるようにターゲットを設定します。
サービスの選定
クライアントの具体的なイメージが設定できた後は、そのクライアントに提供するコーチングの内容を検討し商品化する段階です。
提供するコーチングのテーマやジャンル、1回あたりの時間とコーチングの回数や頻度、料金、提供方法などを決定します。この時、自分の強みや得意分野、スキル、キャリアを活かした内容を盛り込むことができれば、他社との差別化を図ることが可能です。
セールス
コーチングの商品化ができた後は、クライアントを確保するための取り組みを行います。この時、注意しなければいけないのがコーチング内容を前面に出しても人は興味を示さないということです。例えば「企業の人材育成に関するコーチングを実施します」と言われても人は興味を持たないでしょう。
人が興味を示すのは、コーチングを受けることによって「どのようなことが達成できるのか」という未来の形になります。つまり「コーチングで社員の能力やモチベーションを向上させ、職場を活性化する」「離職率を下げる」などです。
このようにクライアントのニーズをコーチングによって解決できることを示せば、クライアントの確保は容易と考えられます。
まとめ
コーチングは対象者が本来持っている能力やスキルを、対象者とコミュニケーションを取ることで引き出します。そして自発的な行動につなげて目標達成をサポートしていく取り組みです。人を相手にするビジネスのため、お互いの信頼関係が重要と言えます。
人との信頼関係は、こちらが売りたい商品を一方的に勧める形では構築することはできません。相手が必要としているものを相手の視点に立って考え、提供していくことで強固な信頼関係の構築が可能となります。
このようにコーチングのビジネスを行う場合は、コーチング自体を売るのではなく、相手の視点に立って得られる未来の効果を売る姿勢が大切です。