ゲシュタルト療法の特徴
フリッツ・パールズのゲシュタルト療法の特徴は、クライエントの抱えている問題を軽減しようとか解決しようとは考えません。主体的で自由な状態を創り上げ、人間的な成長を目指します。
分析や解釈を避け自然な心の流れを尊重
特に無意識的な身体表現に注目し、フィードバックします。
しかし、なぜ腕を組むのか、なぜ重心がずれたのか、といったことについて解釈を入れたり説明することはありません。「今ここ」の自分に気づかせ、意図ある身体表現の意味に自ら気づくことが統合された人格への成長に繋がります。それを変化の逆説と言います。
※変化の逆説:あるがままの今を知ることで自然と変化すること。
統合された人格を目指す
ゲシュタルト療法は、統合された人格を目指します。
そうしたパーソナリティには3つの特徴があります。
1.今、ここを生きていること
人間は今この一瞬だけを生きているのであって、変えることのできない過去に縛られたりまだ来てもいない明日に悩むことは意味の無いことです。「遊ぶ時は遊ぶ」と言うように、ゲシュタルトを自在に転換できているということです。今以外の時間や他の場所を生きることを望みません。
2.自分に正直でいられること
自分の感情を歪曲したり抑圧したりしないこと。喜怒哀楽を素直に表現し、嬉しいことがあれば徹底して喜ぶ。また、辛いことや悲しいことから逃げることなくその感情になりきれること。また、他人の評価や道徳に巻き込まれることなくあるがままの自分で生きていること。
3.責任のある行動をしていること
自らの行動に対して自らが責任を引き受けるように仕向けます。「彼がそうしたから自分もそうした」、「彼女が言ったからその通りにした」と言えば全ての責任は他人です。どんな時も自分の行動には自分が責任を持ち「自分がそうしたいからそうした」と考えます。自分の行動に責任を取ることを避け、それを、他者や過去になすりつける行為は本人へ無力で依存的なパーソナリティを促すになるのです。
ゲシュタルト療法での責任とは、「自分の主は自分である」と自覚していることを意味します。
自らの行動を自らが選択していることに気づくことは、主体性を回復し自他への信頼を回復します。不健全なパーソナリティを維持していると、新しいゲシュタルトの創造(成長)を妨げることになりワンパターンのゲシュタルトがいつまでもループすると考えられます。そこで、ゲシュタルト療法は、クライエントの言動に直接かかわりゲシュタルトの転換と創造を援助します。
ゲシュタルト療法の主な技法
■エンプティチェア
誰も座っていない椅子を用意します。その椅子にクライエントが何かを伝えたいと思う人物が座っていると仮定し、伝えることのできなかった想いや感情を伝える技法。カタルシス効果が強く期待できる技法です。
■トップ・ドッグ/アンダー・ドッグ
葛藤への対処に用いられる技法。「~すべき」「~してはならない」というトップ・ドッグと「~したくない」「~はイヤ」といったアンダー・ドッグをエンプティチェアーなどを使って葛藤を統合します。
■事実と感情表現
ゲシュタルト療法では感情を体感することを大切にします。「今日の午前は、パソコンでブログの記事を3記事書きました。」「それで何を感じましたか?」というように事実を語ったあとに何を思ったのか感情を表現させる。
■ホットシート
クライエントを5~10名程度で囲み、クライエントの欠点や短所を伝えるといった特殊な技法。抑圧している問題を強制的に意識化する効果がある。
■ドリームワーク
夢に統合されていない自己が存在していると考え、夢を記録し夢の中で起こった事をクライエントに演じてもらいます。夢を体感することで気づきを促します。
■ロールプレイ
特定の人物や特定の状況になりきり演じ体感することで問題の解決を図る方法。「できないことをする」「未完遂のワーク」「役割交換」「発言内容と反対のことを言う」などがある。
■ロールレタリング
一人二役で手紙を交換する方法。カウンセラーは秘密が守られていることを伝え自由な告白を許可し支持する。これまで表に出せなかった想いを出し切るまで継続する。
ゲシュタルト療法の内的気づき/外的気づき
■内的な気づき
身体感覚(痛み・重さ・質感・温度・しびれ・だるさ・呼吸・凝り・・)
感情(せつない・嬉しい・楽しい・悲しい・辛い・・)
非言語(姿勢・表情・声のトーン・声の速さ・極微筋肉)
ゲシュタルト療法では普段は意識することのない感情や身体の状態を意識できるように働きかけます。
何か気づくことがあれば強調したり、繰り返すなどして感覚や感情の意味を理解させ「気づき」につなげました。
パールズは、無意識的な反応である非言語にはあらゆる情報が表現されており、それぞれに意味があると考えました。
なぜなら非言語という無意識的行動を知ることは、抑圧している感情や問題を理解する一番の近道となりえるとしたからです。
■外的な気づき
五感(視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚)
人は外的な世界を認識するために五感を使っていますが、日常で認識しているのはごく一部分だけです。見る、聞く、触れる、嗅ぐ、味わうことを通して今ここを取り巻いている環境や世界に気づくことを促します。
ゲシュタルトの祈り
「ゲシュタルト療法」のなかで、パールズがよく提唱していた詩が「ゲシュタルトの祈り」です。これはもとはドイツ語ですから、日本語訳は、訳し方でそれぞれ多少違って書かれています。
私は私の人生を生き、
あなたはあなたの人生を生きる。
私はあなたの期待にこたえるためにこの世にいるのではないし、
あなたも私の期待にこたえるためにこの世にいるのではない。
私は私。あなたはあなた。
もし私たちが、たまたま互いを見つけ出すなら、それは素敵なことだ。
しかしそうならなくても、それもまた仕方のないことである。
まとめ
準備中